イベントレポート

[HashHub Conference2018レポート]起業家によるブロックチェーン時代のアプローチ

 

本日7月21日(土)、HashHub Conference2018〜暗号通貨の今とこれからを考える〜 が開催されました。

このイベントのセッション「起業家によるブロックチェーン時代のアプローチ」が、今後のブロックチェーン関連のビジネスを考えるにあたり非常に示唆に富む内容であったため、詳細にレポートします。

聞いた内容をメモして記事に起こしていますので、内容に抜け漏れや誤りがあると思います。そういったものがありましたら修正しますので、こちらまでメンションください。

(この記事は内容を追加中です。随時修正を行うことがあります)

登壇者

(以下敬称略)

パネルディスカッション

Q ブロックチェーンに興味を持ち出した時期はいつ頃か。

有安 昔、起業関係の合宿の会費をビットコインで集めるということをやった。BTCが2.5万円くらいの時だった。取引所で口座を作って「これは怪しい」と思って、それでその時は終わった。

國光 昔はブロックチェーンの批判派筆頭だった。仮想通貨がうさん臭いと思ったのは、monacoinをすごく昔に勧められたことがあって、「gumiのゲームで決済に使えるようにすると値段が上がるよ」と言われて「クソだな」と思った。その後も長いことそう思っていた。

コロプラの千葉さんなど何人かに「仮想通貨を持っていないのか?起業家として食わず嫌いでいいのか?」と言われて、そんなに言うなら徹底的に調べて批判しようと思った。徹底定期に調べて、「これはすごい」と思った。ブロックチェーンはすごい。世の中を変えていくと思う。

Q 関心を持っている領域やプロジェクトは何か?

有安 今現在流動性がないもの。権利や株式が流動性を保つべくトークンを出すことや、管理とか記録とかのコストがかかっているものをブロックチェーンにすることなど。こういったものは作るのは大変だが、長期的に見れば必ずくるものと考えている。

國光 2007年からの10年間は起業家にはとても楽な時期だった。なんでもスマホファースト、スマホオンリーで良かったから。既存のものをディスラプトしてスマホに置き換えていくだけでよかった。

決定的に重要なのは、「その技術でしかできないことをやっていく」こと。VR、ARがそう。ブロックチェーンも同じで、ブロックチェーンでしかできないことを見つけていくことが重要。

今あるブロックチェーン関連のプロダクトのうち99%は別にブロックチェーンでなくてよいもの。銀行間送金をブロックチェーンでわざわざやるのは馬鹿らしいと思う。なぜならすでにSwiftでできているから。

トラストレスで自律的に動くdecentralizedなネットワークはブロックチェーンでしかできない。

もう一点。エンターテインメント領域のブロックチェーンで思うのは、デジタルデータが唯一性と資産性をもったことが新しい。

インターネット時代はデータそのものに価値がなくなって、全てサービス業になった。
面白いのは、ビットコインはただのデータなのに価値があること。改ざんできないという特性以上に面白いのが、コピーできないということ。

2007年に起業していればスマホファーストでディスラプトしていけば良かった。

今起業する人はラッキー。ブロックチェーンファーストでディスラプトしていけばいい。

ビットトレントなどのP2Pのネットワークがうまくいかなかったのは、みんな自分のファイルをやりとりするのには興味があるが、他の人のファイルはどうでもいいから。

動画配信ネットワークのthetaがいいのは、サービスの利用者がネットワークに繋げておくだけでトークンが得られること。金儲けのためにやって、それでみんなうまく回る。性悪説でネットワークが回っている。thetaは、みんなの空いてるリソースを少しずつ使って、マイニングでみんなに少しずつお金がいくようになっている。シェアリングエコノミーとトークンエコノミーは極めて親和性が高い。

Q gumiのクリプトファンドはどのようなものか。

國光 30億円のファンドで、現在合計8件に投資している。

アメリカの規制の方向が見えてきた。99.9%のICOは証券になる。その前提でやっておくべき。それで問題になるかといえば、そんなことはない。スタートアップの株式と変わらない。マザーズに上場するなら管理部3人くらいでいけるが、それくらいのもの。

ICOの取り扱い法規は金商法にすべき。

なんでこの規制が必要なのかというとシンプルで、投資家保護。未上場時はそのリスクを取れる人だけが買える、というのは理にかなっている。こうなるのは当然。ルールが定まってくるとはじめて機関投資家が入ってくる。

年内にアメリカの規制の方向性が定まる。その方向は間違いなく証券になる。日本もそれをフォローするだろう。日本の現在のルールでできるよう、無理やり仕組みを作ってもサービス内容が複雑で訳がわからなくなっている。だから、最初から証券としてトークン設計すべき。

面倒臭いのは会計のところで、東証、監査法人などと果てしない調整がある。アメリカでは、監査の方針も後3ヶ月くらいで決着がつきそう。日本はそこからさらに半年遅れくらいだろう。

ちゃんとサービス開発したら今から1年くらいかかるだろうから、それも見越してプロダクトに向かい合った方がいい。

Q gumiのファンドから投資するブロックチェーン関連のプロジェクトの選定方法、評価手法、価格算出方法は?

有安 自分はそんなに投資できてない。現地でインナーサークル入ってないと投資できない。ユースケースがないと投資しづらい。

國光 ブロックチェーンのプロジェクトは調べるほどに「普通じゃない」と思えてくる。

スタートアップ企業は、できる限りステルスでいく。それで気づいたら大手がかなわないほど大きくなっているのが理想だが、ブロックチェーンは違う。プロダクトがないし、最初からホワイトペーパーで計画を表面に出している。だから、差別化はチーム力、組織力しかない。

ブロックチェーンのプロジェクトに投資するためには、サンフランシスコ、深圳、香港のインナーサークルに入ること。日本の市場は大きいので、ジャパンエントリーを支援するというのは彼らには魅力的に映る。これからシリコンバレー系VCの巻き返しが強くなると思う。

Q ICOの今後について

有安 是正される思う。誰かが必ず最後に損するババ抜きみたいなICOは減って行く。

國光 クラウドセールに一般人が参加できるというのがそもそも間違っている。そんなのは詐欺師がきて当然。上場してチェックが終わった後に一般人が買えるようになるというのは正常だと思う。

Q ブロックチェーンの3年から5年の視野での展望はどうか。

有安 すごくポジティブだと思う。ただ、必ず冬は訪れる。そこで頑張った人が春に収穫を得る。仕込み時期として今は最高。今スタートアップを始めるのはいい。(#起業しろお金もダブついてるし。起業を検討してる人はした方がいい。

國光 大きいのは規制が入ること。これはよいことで、機関投資家の桁の違うお金が入ってくるということ。次のちゃんとした形での市場が起こってくる。

大切なのはブロックチェーンでしかできないことをやること。トラストレスかつ自律的に動くdecentralizedなネットワークで、デジタルデータが唯一性と資産性を持つというはブロックチェーンでしかできないこと。そういう分野をやることが大切。

Financie(フィナンシェ)というブロックチェーンのTCGを準備している。CBTをやっているので参加してほしい。正式サービスでは日本とアメリカではプレイできなくなってしまうが…。

株式会社というのはすごく大きな発明で、組織がみんなの期待を集めてお金を集められるようになった。人はまだそうなっていない。Valuっぽいが、Financieはその部分を圧倒的にパワーアップさせた。
Valuの問題は透明性、流動性、インセテンィブ設計だと思うが、それを改善させた。

参加しての感想

「どうしたら実社会でブロックチェーンが利用されるようになるのだろう?」という疑問を長いこと抱いていたのですが、その答えに至るための大きなヒントを得たと感じられるパネルディスカッションでした。

國光さんが繰り返し主張された「ブロックチェーンでしかできないことを見つけ、それで既存のものをディスラプトしていくこと」というのは、ブロックチェーンのビジネスを進めるにあたっての非常に有効な指針になると思います。

それは、具体的には以下の2点に集約されます。

「トラストレスで自律的に動くdecentralizedなネットワークを活かすこと」

「デジタルデータが唯一性と資産性を持つという特徴を活かすこと」

さらに言えば、「すでにできていることをブロックチェーンで作り直しても意味はない」ということでもあります。

この条件を満たしたプロダクトであってはじめて、実世界で本格的に利用されるようになるのでしょう。

この点をとっかかりに、さらに思考を深めていきたいと思います。